日本労働組合総連合会滋賀県連合会 連合滋賀

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連合2024春季生活闘争方針

連合2024春季生活闘争方針

2024春季生活闘争スローガン
みんなで賃上げ。ステージを変えよう!


 

Ⅰ.2024春季生活闘争の意義と基本スタンス

1.「未来づくり春闘」で経済社会のステージ転換を着実に進めよう

「未来づくり春闘」を掲げて3回目の取り組みとなる。「未来づくり」とは、経済成長や企業業績の後追いではなく、産業・企業、経済・社会の活力の原動力となる「人への投資」を起点として、ステージを変え、経済の好循環を力強く回していくことをめざすものである。短期的な視点からの労働条件決定にとどまらず、20年以上にわたる賃金水準の低迷、その中で進行してきた不安定雇用の拡大と中間層の収縮、貧困や格差の拡大などの課題について中期的な分配構造の転換をはかり、すべての働く者の総合的な生活改善をはかる。
この2年間の取り組みの結果、20年以上にわたるデフレマインド(長きにわたるデフレの経験によって定着した、物価や賃金が上がりにくいことを前提とした考え方や慣行)が変化しつつある。2024春季生活闘争は、経済も賃金も物価も安定的に上昇する経済社会へとステージ転換をはかる正念場である。その最大のカギは、社会全体で問題意識を共有し、持続的な賃上げを実現することにある。
政府は「景気は緩やかに回復している」としているものの、2023年4-6月の個人消費はマイナスとなり内需が低迷している。名目賃金は上昇しているものの物価を加味した実質はマイナスで推移し、勤労者世帯の暮らしは厳しさを増している。2024春季生活闘争では、傷んだ労働条件の回復をはかり、生活向上につながる賃上げを実現しなければならない。
マクロの視点に加え、産業基盤強化の取り組みも重要である。国内外情勢(変化する国際関係とグローバルサプライチェ-ンへの影響、人口減少の長期トレンド、GXへの対応など産業構造の変化など)を展望し、労使が協力して将来を見据えた成長基盤を確立・強化する必要がある。「人への投資」をより一層積極的に行うとともに、国内投資の促進とサプライチェーン全体を視野に入れた産業基盤強化などにより、日本全体の生産性を引き上げ、成長と分配の好循環を持続的・安定的に回していく必要がある。
連合は、働く仲間の力を結集し社会的うねりをつくりだすべく、先頭に立って運動をけん引していく。
 

2.「働くことを軸とする安心社会」に向け、格差是正と分配構造の転換に取り組もう

1990年代後半以降、国民全体の所得が下方にシフトする中で格差の拡大や貧困層の増加が進んできた1。これまでの流れを変え、社会全体の生産性の伸びに応じて賃金の中央値を引き上げるとともに賃金の底上げ・格差是正をはかり、中期的に分厚い中間層の復活と働く貧困層の解消をめざす必要がある。そうした分配構造の転換への道筋を切り開くべく、2023春季生活闘争の成果と課題を踏まえ、規模間、雇用形態間、男女間の格差是正の前進をはかる。
2023春季生活闘争では、全体の賃上げ率は高まったものの、中小の賃上げ率は相対的に低位にとどまった。中小企業ほど人手不足が深刻である一方、適正な価格転嫁が遅れ企業収益を圧迫している傾向にある。今次闘争では、積極的に格差是正を含む賃上げに取り組む。そのためには、労務費を含む適正な価格転嫁や「人への投資」「未来への投資」を通じた生産性の向上などにより、継続的に格差是正を含めた賃上げができる環境を政策面と労使コミュニケーションの両面からつくっていく必要がある。
2023春季生活闘争では、有期・短時間・契約等労働者の賃上げはフルタイム組合員を上回り、連合が時給の集計を開始した 2000 年代中盤以降では最大の引き上げとなった。2023年度地域別最低賃金も連合結成以降最大の引き上げとなった。引き続き雇用形態間格差の是正に取り組む。男女間賃金格差の是正についても、「男女の賃金の差異」の状況把握と情報公表の義務化などを踏まえた取り組みが進んでおり、さらに前進をはかるべく取り組んでいく。
誰もが安心・安全に働くことができ、個々人のニーズにあった多様な働き方ができるように、引き続き、長時間労働是正、有期・短時間・契約等労働者の雇用安定や処遇改善、60歳以降の雇用と処遇、テレワークの導入、障がい者雇用の取り組み、ハラスメント対策など、働き方の改善に取り組む必要がある。
総合的な経済対策、適正な価格転嫁の取り組み、GX、DXを含めた産業構造転換への対応、将来にわたるエネルギーの安定供給、働き方に中立的な社会保険制度等の構築など、政策面での対処も必要である。
こうした点を踏まえ、①賃上げ、②働き方の改善、③政策・制度実現の取り組みを柱とする総合生活改善闘争の枠組みのもと、産業状況の違いを理解しあいながら、中期的視点を持って「人への投資」と月例賃金の改善に全力を尽くす。

3.「みんなの春闘」2を展開し、集団的労使関係を広げていこう

引き続き、生産性三原則にもとづく建設的な労使交渉を通じ、成果の公正な分配をはかり、労働条件の向上を広く社会に波及させていく。社会的影響力を高めるには、より多くの働く仲間を結集することが必要であり、多様な働く仲間を意識した取り組み展開ができるよう工夫する。
春季生活闘争は、労働組合の存在意義をアピールできる場でもある。組織拡大・強化の取り組みと連動し、集団的労使関係を社会に広げていく機会とする。
産業構造の変化をはじめとする社会的課題を解決していくには、企業労使間の交渉のみならず、国・地域・産業レベルでの政労使の対話が不可欠であり、すべての働く仲間を視野に入れ、あらゆる機会を通じて対話を重ね相互理解を深めていく。

 

Ⅱ.2024春季生活闘争取り組みに向けた基盤整備

1.サプライチェーン全体で生み出した付加価値の適正分配

中小企業や有期・短時間・契約等で働く者の賃金を「働きの価値に見合った水準」に引き上げるために、以下の 5 点に重点をおいて、サプライチェーン全体で生み出した付加価値の適正分配、働き方も含めた「取引の適正化」に取り組む。
 
①労働組合の立場からも「パートナーシップ構築宣言」のさらなる拡大と実効性強化に取り組む。構成組織は、加盟組合のある企業の締結状況を把握し締結促進に取り組む。
②政府が年末に向けて策定中の「労務費の転嫁の在り方」についての指針が実効性ある有効な内容となるよう、働きかけを行う。決定以降は、内容の周知・浸透活動を行う。
③2023年3月「価格交渉促進月間」の結果などを踏まえ、自主行動計画や業種ガイドラインの改訂・新設を働きかける。また、「すべての労働者の立場にたった働き方」の改善とあわせて、自動車運転手、建設業などに関わるいわゆる2024問題に社会全体で取り組むよう働きかける。
④中小企業などへの各種支援策の周知・活用促進とさらなる拡充に取り組む。
⑤格差是正フォーラム(12月7日)、未来を拓くパ-トナーシップ構築推進会議、政府への要請活動、経営者団体との懇談会などを通じ世論喚起をはかる。各地域における連携協定の枠組みなども活用し、①~④の取り組みについての周知活動・相談活動を進める。
 

2.賃金水準闘争を強化していくための取り組み

労働組合は、自らの賃金実態を把握し、構成組織等が掲げる賃金水準をはじめとする社会的な賃金指標や生計費の指標と比較することで是正すべき格差を把握し、めざすべき目標を設定する。連合「地域ミニマム運動」等への参画を通じて、組合員の賃金実態を把握する。
構成組織は、加盟組合による個人別賃金データの収集・分析・課題解決に向けた支援を強化する。同時に、地域における産業別賃金相場の形成を視野に入れて、「地域ミニマム運動」への積極的参画体制を整えるため、地方連合会と連携していく。
厚生労働省「賃金構造基本統計調査」の特別集計による職種別賃金データを賃金分析の参考資料として活用する。
 

3.雇用の維持・創出、社会的セーフティネットの維持・強化

コロナ禍の影響や産業構造の変化などによる雇用への影響に対して、連合は、政策・制度面から引き続き取り組むとともに、大きな影響を受けている構成組織などとも連携をはかりながら、交渉の環境づくりに取り組む。
構成組織や加盟組合においては、労使協議等を通じ、産業や企業の現状と見通しに関する情報や今後の計画などについて十分把握し、必要な対応をはかる。
 

4.集団的労使関係の輪を広げる取り組み

組織化は労使交渉の大前提であり、2024春季生活闘争がめざすところの実現に不可欠である。春季生活闘争の取り組みを通じ、労働組合の意義と集団的労使関係の重要さについて社会にアピールするとともに、仲間づくりにつなげていく。
職場における労使協定の締結や過半数代表制の運用の適正化に向けた職場点検活動の徹底を働きかけるとともに、地域の中小・地場企業などにもその重要性を周知し、徹底的に組織強化・拡大につなげる。
フリーランス、「曖昧な雇用」で働く仲間の声を拾い課題解決につなげる取り組みを進め、すべての働く仲間をまもりつなぎ支え、社会全体の底上げをはかる運動を推進する。
 

Ⅲ.2024春季生活闘争の取り組み内容

1.賃金要求
(1)賃上げについての考え方

国際的に見劣りする日本の賃金水準を中期的に引き上げていく必要がある。90年代後半以降、わが国の実質賃金が上がっていない一方、主要国は年 1~2%ずつ上昇し、その結果、賃金水準の相対的位置が低下し、さらに拡大している可能性がある。わが国全体の生産性は、実質で 1%弱伸びており、生産性の中期トレンドを考慮した賃上げを継続的に行い、賃金水準の回復をはかり、昨年を上回る取り組み強化が必要である。
超少子・高齢化により生産年齢人口の減少が不可避である中、将来にわたり人材を確保・定着させ、わが国全体の生産性を高めていくには、継続的な「人への投資」が重要である。2023年度の地域別最低賃金は 4%以上引き上げられ、労働市場における募集賃金は上昇を続けており、同業他社との比較や同一地域の賃金相場に見劣りせず優位性をもてる賃金水準を意識した賃金決定が求められる。また、企業業績は産業や企業規模などによって違いがあるものの全体でみれば高い水準(「法人企業統計」)で推移しており、傷んだ労働条件を回復させ「人への投資」を積極的に行うべき局面にある。
わが国の賃金水準は、依然として 1997 年時点の水準を回復していない。2023春季生活闘争の結果、名目の所定内賃金は 2%程度上昇しているものの、物価を加味した実質はマイナスで推移している。勤労者世帯の暮らしは厳しさを増しており、生活向上につながる賃上げを実現しなければならない。世界経済が減速している中
で、賃上げなどにより可処分所得を増やし、内需の 6 割を占める個人消費を支えなければ景気の悪化を招く恐れがある。
低所得層ほど物価上昇の影響が強く、生活がより苦しくなっており、マクロの個人消費低迷の大きな要因となっている。また、2023 春季生活闘争の賃上げ集計結果からすると、規模間格差は拡大している可能性がある。全体として労働側への分配を厚くし、企業規模間、雇用形態間、男女間の賃金格差是正を進めるとともに、中期的に分厚い中間層の復活と働く貧困層の解消をめざす必要がある。
 

(2)具体的な要求目標とその位置づけ

連合は、わが国の経済社会の全体状況を踏まえ、すべての働く仲間を視野に入れ、連合の大きな旗の下に結集して社会を動かす力(社会的メッセージの発信、賃金相場の形成と波及、相乗効果)を発揮できるよう、具体的な要求目標の目安を示す。
構成組織は、社会的役割を踏まえ、それぞれの産業状況や賃金水準の現状、直近の経済状況などを加味して要求基準を策定する。また、賃金水準目標を設定し、単組の中期的・段階的な格差是正の取り組みを促進する。
地方連合会は、連合本部の方針を基本に地域の状況を反映し、中小・地場組合の交渉支援と地域レベルでの賃金相場の形成と波及、情報発信に取り組む。
上記の基本的な役割分担を踏まえた上で、連合は、月例賃金について、産業相場や地域相場を引き上げていく「底上げ」のための「上げ幅の指標」と「格差是正」と賃金「底支え」を念頭においた「水準の指標」の目安を示す。月例賃金にこだわるのは、これが最も基本的な労働条件であり、社会的な水準を考慮して決めるべき性格のものだからである。所定内賃金で生活できる水準を確保するとともに、「働きの価値に見合った水準」に引き上げることをめざす必要がある。
 

【「底上げ」「底支え」「格差是正」の取り組みの考え方】
【賃金要求指標パッケージ】

 

1)中小組合の取り組み(企業規模間格差是正)

①「2024春季生活闘争取り組みに向けた基盤整備」を前提に、規模間格差の是正をより意識して、格差是正を含む賃上げに取り組む。
②賃金カーブ維持分は、労働力の価値の保障により勤労意欲を維持する役割を果たすと同時に、生活水準保障でもあり必ずこれを確保する。賃金カーブ維持には定期昇給制が重要な役割を果たす。定期昇給制度がない組合は、人事・賃金制度の確立を視野に入れ、労使での検討委員会などを設置して協議を進めつつ、定期昇給制度の確立に取り組む。構成組織と地方連合会は連携してこれらの支援を行う。
③すべての中小組合は、上記にもとづき、賃金カーブ維持相当分(1年・1歳間差)を確保した上で、自組合の賃金と社会横断的水準を確保するための指標(上記および「連合の賃金実態」)を比較し、その水準の到達に必要な額を加えた総額で賃金引き上げを求める。また、獲得した賃金改善原資の各賃金項目への配分等にも積極的に関与する。
④賃金実態が把握できないなどの事情がある場合は、格差是正分を含め、15,000円以上を目安とする。

2)雇用形態間格差是正の取り組み

①2023年度地域別最低賃金が4.5%と連合結成以来最大の引き上げとなった。既存者の賃金についても適切に対応し、モチベーションを向上させ、フルタイム労働者との格差是正に取り組むとともに、有期・短時間・契約等労働者の生活を守り、雇用形態間格差の是正をはかるため、昨年以上の取り組みを展開する。
②有期・短時間・契約等で働く者の労働諸条件の向上と均等待遇・均衡待遇確保の観点から、企業内のすべての労働者を対象とした企業内最低賃金協定の締結をめざす。締結水準については、時給1,200円以上をめざす。
③有期・短時間・契約等で働く者の賃金を「働きの価値に見合った水準」に引き上げていくため、フルタイム労働者の昇給ルールと同等の制度の導入により能力の高まりに応じた処遇の実現に取り組む。なお、昇給ルールを導入する場合は、勤続年数で賃金カーブを描くこととし、水準については、「勤続17年相当で時給1,795円・月給296,000円以上」となる制度設計をめざす。
④法定最低賃金の取り組み方針は、2023年12月の中央執行委員会で提起する。
 

(3)男女間賃金格差および生活関連手当支給基準の是正

男女間における賃金格差は、勤続年数や管理職比率の差異が主要因であり、固定的性別役割分担意識等による仕事の配置や配分、教育・人材育成における男女の偏りなど人事・賃金制度および運用の結果がそのような問題をもたらしている。
女性活躍推進法の省令改正により、301人以上の企業に対して「男女の賃金の差異」の把握と公表が義務づけられており、指針では「男女の賃金の差異」の把握の重要性が明記されている。これらを踏まえ、企業規模にかかわらず男女別の賃金実態の把握と分析を行うとともに、問題点の改善と格差是正に向けた取り組みを進める。
 
1)賃金データにもとづいて男女別・年齢ごとの賃金分布を把握し、「見える化」(賃金プロット手法等)をはかるとともに、勤続年数なども含む賃金格差につながる要因を明らかにし、問題点を改善する。
2)生活関連手当(福利厚生、家族手当等)の支給における住民票上の「世帯主」要件は実質的な間接差別にあたり、また、女性のみに住民票などの証明書類の提出を求めることは男女雇用機会均等法で禁止されているため廃止を求める。

(4)初任給等の取り組み

1)すべての賃金の基礎である初任給について社会水準12を確保する。
2)中途入社者の賃金を底支えする観点から、年齢別最低到達水準についても協定締結をめざす。

(5)一時金

1)月例賃金の引き上げにこだわりつつ、年収確保の観点も含め水準の向上・確保をはかることとする。
2)有期・短時間・契約等で働く労働者についても、均等待遇・均衡待遇の観点から対応をはかることとする。
 

2.「すべての労働者の立場にたった働き方」の改善

日本は構造的に生産年齢人口が減少の一途をたどる中、わが国全体の生産性を高め、「人材の確保・定着」と「人材育成」につなげていくためには、職場の基盤整備が重要である。
したがって、豊かな生活時間とあるべき労働時間の確保、すべての労働者の雇用安定、均等・均衡待遇実現、人材育成と教育訓練の充実など、「すべての労働者の立場にたった働き方」の改善に向けて総体的な検討と協議を行う。
また、企業規模によって、法令の施行時期や適用猶予期間の有無、適用除外となるか否かが異なる13が、働き方も含めた取引の適正化の観点も踏まえ、取り組みの濃淡や負担感の偏在が生じないよう、すべての構成組織・組合が同時に取り組むこととする。
 

(1)長時間労働の是正

1)豊かな生活時間とあるべき労働時間の確保
すべての働く者が「生きがい」「働きがい」を通じて豊かに働くことのできる社会をめざし、豊かで社会的責任を果たしうる生活時間の確保と、「年間総実労働時間1800時間」の実現に向けた労働時間短縮の取り組みによる安全で健康に働くことができる職場の中で最大限のパフォーマンスが発揮できる労働時間の実現とを同時に追求していく。
2)改正労働基準法に関する取り組み
労働者の健康確保が労働時間制度の大前提であるとの認識のもと、時間外労働の上限規制を含む改正労働基準法等の職場への定着促進および、法の趣旨に沿った適切な運用の徹底をはかる観点から、以下に取り組む。
取り組みにあたっては、改めて事業場単位での過半数代表者および過半数労働組合に関する要件・選出手続等の適正な運用に取り組む。
 
①36協定の締結・点検・見直し(限度時間が上限であることを原則とした締結、休日労働の抑制)、締結に際しての業務量の棚卸しや人員体制の見直し
②すべての労働者を対象とした労働時間の客観的な把握と適正な管理の徹底
③「裁量労働制」や「事業場外みなし」など労働時間制度の運用実態の把握および適正運用に向けた取り組み(労働時間の点検、裁量労働制の改正(2024年4月施行)を踏まえた専門業務型の本人同意の義務化、同意撤回の手続の定めなどに関する労使協定・労使委員会決議の見直し、健康・福祉確保措置の実施状況の点検・見直し)
④年次有給休暇の100%取得に向けた計画的付与の導入等に関する取り組み
⑤月60時間超の時間外労働に対する割増賃金率 50%の徹底
⑥建設業、自動車の運転業務、医師に対する時間外労働の上限規制の適用開始(2024年4月)に向けた労使協議および各制度の周知・遵守徹底の取り組み
 

(2)すべての労働者の雇用安定に向けた取り組み

雇用の原則は「期間の定めのない直接雇用」であることを踏まえ、雇用形態にかかわらず、すべての労働者の雇用の安定に向けて取り組む。
 
1)有期雇用労働者の雇用の安定に向け、労働契約法18条の無期転換ルールの周知徹底および、労働条件明示ルールの改正(2024年4月施行)を踏まえた対応(更新上限の有無・内容、無期転換申込機会および転換後の労働条件の明示義務化など)、無期転換回避目的の安易な雇止めなどが生じていないかの確認、通算期間5年経過前の無期転換の促進、正社員転換の促進などを進める。
2)派遣労働者について、職場への受入れに関するルール(手続き、受入れ人数、受入れ期間、期間制限到来時の対応など)の協約化・ルール化をはかるとともに、直接雇用を積極的に受入れるよう事業主に働きかけを行う。
 

(3)職場における均等・均衡待遇実現に向けた取り組み

同一労働同一賃金に関する法規定の職場への周知徹底をはかるとともに、労働組合への加入の有無を問わず、有期・短時間・派遣労働者の均等・均衡待遇実現に向け取り組む。
無期転換労働者のうち短時間労働者についてはパート有期法に関する取り組みを徹底する。フルタイム無期転換労働者については均等・均衡待遇実現のため法の趣旨にもとづき短時間労働者と同様の取り組みを進める。
 
1)有期・短時間労働者に関する取り組み
①正規雇用労働者と有期・短時間で働く者の労働条件・待遇差の確認
②(待遇差がある場合)賃金・一時金や各種手当等、個々の労働条件・待遇ごとに、その目的・性質に照らして正規雇用労働者との待遇差が不合理となっていないかを確認
③(不合理な差がある場合)待遇差の是正
④有期・短時間労働者の組合加入とその声を踏まえた労使協議の実施
 
2)派遣労働者に関する取り組み
①派遣先労働組合の取り組み
a)正規雇用労働者と派遣労働者の労働条件・待遇差を確認する
b)派遣先均等・均衡待遇が可能な水準での派遣料金設定や派遣元への待遇情報の提供など、事業主に対する必要な対応を求める
c)食堂・休憩室・更衣室など福利厚生施設などについて派遣労働者に不利な利用条件などが設定されている場合は、是正を求める
②派遣元労働組合の取り組み
a)待遇情報の共有や待遇決定方式に関する協議を行う
b)待遇決定方式にかかわらず比較対象労働者との間に不合理な格差等がある場合には、是正を求める
c)有期・短時間である派遣労働者については、上記1)の取り組みについて確認(比較対象は派遣元の正規雇用労働者)
 

(4)人材育成と教育訓練の充実

教育訓練は、労働者の技術・技能の向上やキャリア形成に資することはもちろん、企業の持続的な発展にも資する重要な取り組みである。教育訓練は、企業が主体的に推進すべきものであるが、その内容等については、事前に労使で協議を行う。特に、非正規雇用で働く者や障がいを持つ者の雇用安定や処遇改善に向けては、能力開発をはじめとする人材育成・教育訓練の充実が欠かせない。
また、職場を取り巻く様々な状況を踏まえ、人材育成方針の明確化や、教育訓練機会の確保・充実、教育訓練休暇制度の創設など、教育訓練を受けやすい環境整備、習得した能力を発揮する機会の確保を行うとともに、各種助成金の活用も含め、雇用形態にかかわらず、広く「人への投資」につながるよう労使で協議する。
 

(5)60 歳以降の高齢期における雇用と処遇に関する取り組み

働くことを希望する高齢期の労働者が、年齢にかかわりなく安定的に働ける社会の構築に向けて環境を整備していく必要がある。
60歳以降も、希望者全員がやりがいを持ち、健康で安心して働くことができる環境整備に取り組む。
なお、高年齢者雇用継続給付の給付率が2025年度に現行の15%から10%に引き下げられることを踏まえ、計画的な対応を検討する。
 
1)基本的な考え方
①60 歳~65 歳までの雇用確保のあり方
・65歳までの雇用確保は、希望者全員が安定雇用で働き続けることができ、雇用と年金の接続を確実に行う観点から、定年引上げを基軸に取り組む。
・なお、継続雇用制度の場合であっても、実質的に定年引上げと同様の効果が得られるよう、65歳までの雇用が確実に継続する制度となるよう取り組む。あわせて、将来的な65歳への定年年齢の引上げに向けた検討を行う。
②65歳以降の雇用(就労)確保のあり方
・65歳以降の就労希望者に対する雇用・就労機会の提供については、原則として、希望者全員が「雇用されて就労」できるように取り組む。
・高齢期においては、労働者の体力・健康状態その他の本人を取り巻く環境がより多様となるため、個々の労働者の意思が反映されるよう、働き方の選択肢を整備する。
③高齢期における処遇のあり方
・年齢にかかわりなく高いモチベーションをもって働くことができるよう、働きの価値にふさわしい処遇の確立とともに、労働者の安全と健康の確保をはかる。
 
2)改正高年齢者雇用安定法の取り組み(65~70歳まで雇用の努力義務)
①同一労働同一賃金の法規定対応の確実な実施(通常の労働者と定年後継続雇用労働者をはじめとする60歳以降の短時間(パート)・有期雇用で働く労働者との間の不合理な待遇差の是正)
②健康診断等による健康や体力の状況の把握と、それに伴う担当業務のマッチングの実施
③働く高齢者のニーズを踏まえた労働時間をはじめとする勤務条件の改善や、基礎疾患を抱える労働者などの健康管理の充実の推進
④高齢化に伴い増加がみられる転倒や腰痛災害等に対する配慮と高年齢労働者の特性を考慮した職場環境改善
⑤労働災害防止の観点から、高齢者に限定せず広く労働者の身体機能等の向上に向けた「健康づくり」の推進と安全衛生教育の充実
 

(6)テレワーク導入にあたっての労働組合の取り組み

テレワークの導入あるいは制度改定にあたっては、次の考え方をもとに取り組みを行う。なお、テレワークに適さない業種や職種に従事する労働者については、感染リスクを回避した環境整備、労働時間管理、健康確保措置など、啓発や適切な措置を講じるものとする。
1)テレワークは、重要な労働条件である「勤務場所の変更」にあたるため、「テレワーク導入に向けた労働組合の取り組み方針」の「具体的な取り組みのポイント」を参考に実施の目的、対象者、実施の手続き、労働諸条件の変更事項などについて労使協議を行い、労使協定を締結した上で就業規則に規定する。その際、情報セキュリティ対策や費用負担のルールなどについても規定する。なお、テレワークの導入・実施にあたっては、法律上禁止された差別等にあたる取り扱いをしてはならないことにも留意する。
2)テレワークに対しても労働基準関係法令が適用されるため、長時間労働の未然防止策と作業環境管理や健康管理を適切に行うための方策をあらかじめ労使で検討する。
3)テレワークの運用にあたっては、定期的な社内モニタリング調査や国のガイドラインの見直しなども踏まえ、適宜・適切に労使協議で必要な改善を行う。
 

(7)障がい者雇用に関する取り組み

障害者雇用率制度のあり方や、障害者雇用における環境整備などを含む「障害者雇用の促進に向けた連合の考え方」にもとづき、以下に取り組む。
 
1)障害者雇用促進法にもとづく法定雇用率が、2024年4月から2.5%(国・地方自治体2.8%、教育委員会2.7%)に引き上げられることを踏まえ、障がい者が安心して働き続けることができるよう、障害者雇用率の達成とともに、各種助成金等の活用を含め、職場における障がい者の個別性に配慮した雇用環境の整備に取り組む。
2)事業主の責務である「障がい者であることを理由とした不当な差別的取扱いの禁止」、「合理的配慮の提供義務」、「相談体制の整備・苦情処理および紛争解決の援助」について、労働協約・就業規則のチェックや見直しに取り組む。
3)ICT等を活用した在宅勤務や短時間勤務など、障がい特性等に配慮した働き方の選択肢を増やし、就労拡充・職域拡大をはかる。
4)雇用の安定やキャリア形成の促進をはかることを目的に、能力開発の機会を確保するよう取り組む。
 

(8)中小企業、有期・短時間・派遣等で働く労働者の退職給付制度の整備

1)企業年金のない事業所においては、企業年金制度の整備を事業主に求める。その際、企業年金制度は退職給付制度であり、賃金の後払いとしての性格を有することから、確実に給付が受けられる制度を基本とする。
2)「同一労働同一賃金ガイドライン」の趣旨を踏まえ、有期・短時間・派遣等で働く労働者に企業年金が支給されるよう、退職金規程の整備をはかる。
 

(9)短時間労働者に対する社会保険の適用拡大に関する取り組み

1)社会保険が適用されるべき労働者が全員適用されているか点検・確認する。
2)事業者が適用拡大を回避するために短時間労働者の労働条件の不利益変更を行わないよう取り組む。また社会保険の適用を一層促進するよう労働条件の改善を要求する。
 

(10)治療と仕事の両立の推進に関する取り組み

疾病などを抱える労働者は、治療などのための柔軟な勤務制度の整備や通院目的の休暇に加え、疾病の重症化予防の取り組みなどを必要としているため、以下に取り組む。
 
1)長期にわたる治療が必要な疾病などを抱える労働者からの申出があった場合に円滑な対応ができるよう、休暇・休業制度などについて、労働協約・就業規則など諸規程の整備を進める。
2)疾病などを抱える労働者のプライバシーに配慮しつつ、当該事業場の上司や同僚に対し、治療と仕事の両立支援についての理解を促進するための周知等を徹底する。
 

3.ジェンダー平等・多様性の推進

多様性が尊重される社会の実現に向けて、性別をはじめ年齢、国籍、障がいの有無、就労形態など、様々な違いを持った人々がお互いを認め合い、やりがいをもって、ともに働き続けられる職場を実現するため、格差を是正するとともに、あらゆるハラスメント対策や差別禁止に取り組む。また、ジェンダー・バイアス(無意識を含む性差別的な偏見)や固定的性別役割分担意識を払拭し、仕事と生活の調和をはかるため、すべての労働者が両立支援制度を利用できる環境整備に向けて、連合のガイドラインや考え方・方針を活用するなどして取り組みを進める。
 

(1)改正女性活躍推進法および男女雇用機会均等法の周知徹底と点検活動

改正女性活躍推進法および男女雇用機会均等法について、連合のガイドラインにもとづき、周知徹底とあわせて、法違反がないかなどの点検活動を行う。また、労使交渉・協議では、可能な限り実証的なデータにもとづく根拠を示し、以下の項目について改善を求める。
 
1)女性の昇進・昇格の遅れ、仕事の配置や配分が男女で異なることなど、男女間格差の実態について点検を行い、積極的な差別是正措置(ポジティブ・アクション)により改善をはかる。
2)合理的な理由のない転居を伴う転勤がないか点検し、是正をはかる。
3)妊娠・出産などを理由とする不利益取り扱いの有無について検証し、是正をはかる。
4)改正女性活躍推進法にもとづく事業主行動計画策定に労使で取り組む。その際、職場の状況を十分に把握・分析した上で、必要な目標や取り組み内容を設定する。
5)事業主行動計画が着実に進展しているか、労働組合として Plan(計画)・Do(実行)・Check(評価)・Action (改善)に積極的に関与する。
6)企業規模にかかわらず、すべての職場において「事業主行動計画」を策定するよう事業主に働きかけを行う。
7)事業主行動計画策定にあたっては、企業規模にかかわらず「男女の賃金の差異」を把握するよう事業主に働きかける。
8)「男女の賃金の差異」の公表に際しては、任意に公表する情報である「説明欄」の活用を事業主に働きかけることにより、差異の分析を促すとともに、労使で改善に取り組む。
9)事業主行動計画の内容の周知徹底はもとより、改正女性活躍推進法や関連する法律に関する学習会等を開催する。
 

(2)あらゆるハラスメント対策と差別禁止の取り組み

職場のハラスメントの現状を把握するとともに、カスタマー・ハラスメントや就活生などに対するハラスメントを含むあらゆるハラスメント対策や差別禁止の取
り組みを進める。その上で、労働協約や就業規則が定めるハラスメントや差別に関する規定やガイドライン16を確認し、その内容が法を上回る禁止規定となるようさらなる取り組みを進める。
 
1)ハラスメント対策関連法(改正労働施策総合推進法等)で定めるパワー・ハラスメントの措置義務が 2022 年 4 月 1 日よりすべての企業に課されたことから、連合のガイドラインにもとづき、労働組合としてのチェック機能を強化するとともに、職場実態を把握した上で、事業主が雇用管理上講ずべき措置(防止措置)や配慮(望ましい取り組み)について労使協議を行う。
2)同性間セクシュアル・ハラスメント、ジェンダー・ハラスメントも含めたセクシュアル・ハラスメントの防止措置の実効性が担保されているか検証する。
3)マタニティ・ハラスメントやパタニティ・ハラスメント、ケア(育児・介護)・ハラスメントの防止措置の実効性が担保されているか検証する。
4)パワー・ハラスメントを含めて、あらゆるハラスメントを一元的に防止する取り組みを事業主に働きかける。
5)LGBT理解増進法が 2023年6月に施行されたことから、性的指向・性自認に関するハラスメントや差別の禁止、望まぬ暴露であるいわゆるアウティングの防止やプライバシー保護に取り組むとともに、連合のガイドラインを活用して就業環境の改善等を進める。あわせて、差別撤廃の観点から、同性パートナーに対する生活関連手当の支給をはじめとする福利厚生の適用を求める。
6)10項目ある雇用管理上の措置(防止措置)がすべて実施されているか点検するとともに、とりわけハラスメント行為者に対する厳正な対処が行われるよう、諸規定の改正を進める。
7)ドメスティック・バイオレンスをはじめとする性暴力による被害者を対象とした、相談支援機関との連携強化を含めた職場の相談体制の整備や休暇制度の創設等、職場における支援のための環境整備を進める。
 

(3)育児や介護と仕事の両立に向けた環境整備

改正育児・介護休業法について、周知徹底とあわせて改正内容が実施されているかなどの点検活動を行うとともに、連合の方針等にもとづき、以下の課題について取り組みを進める。
 
1)2022年4月1日施行の改正育児・介護休業法で定める事業主が雇用管理上講ずべき措置(雇用環境の整備、個別周知、意向確認)が行われているか点検し、「雇用環境の整備」については複数の措置を行うよう労使協議を行う。
2)育児や介護に関する制度を点検するとともに、両立支援策の拡充の観点から、法を上回る内容を労働協約に盛り込む。
3)有期契約労働者が制度を取得する場合の要件については、改正法に定められた「事業主に引き続き雇用された期間が 1 年以上である者」が撤廃されているか点検したうえで、法で残っている「子が1歳6カ月に達する日までに労働契約が満了することが明らかでないこと」についても撤廃をはかる。
4)育児休業、介護休業、子の看護休暇、介護休暇、短時間勤務、所定外労働の免除の申し出や取得により、解雇あるいは昇進・昇格の人事考課等において不利益取り扱いが行われないよう徹底する。
5)妊産婦保護制度や母性健康管理措置について周知されているか点検し、妊娠・出産および制度利用による不利益取り扱いの禁止を徹底する。
6)女性の就業継続率の向上や男女のワーク・ライフ・バランスの実現に向けて、2022年10月1日施行の出生時育児休業(産後パパ育休)の整備など男性の育児休業取得促進に取り組む。
7)両立支援制度や介護保険制度に関する情報提供など、仕事と介護の両立を支援するための相談窓口を設置するよう求める。
8)不妊治療と仕事の両立のため、取得理由に不妊治療を含めた休暇等(多目的休暇または積立休暇等を含む)の整備に取り組み、2022年4月1日施行の「くるみんプラス」の取得をめざす。
9)男女の更年期、生理休暇などの課題を点検・把握し、環境整備と制度導入に向けた取り組みを進める。
10)事業所内保育施設(認可施設)の設置、継続に取り組み、新設が難しい場合は、認可保育所と同等の質が確保された企業主導型保育施設の設置を求める。
 

(4)次世代育成支援対策推進法にもとづく取り組みの推進

1)ワーク・ライフ・バランスの推進に向けた労働組合としての方針を明確にした上で、労使協議を通じて、計画期間、目標、実施方法・体制などを確認し、作成した行動計画の実現をはかることで「トライくるみん」・「くるみん」・「プラチナくるみん」の取得をめざす。
2)「トライくるみん」・「くるみん」・「プラチナくるみん」を取得した職場において、その後の取り組みが後退していないか労使で確認し、計画内容の実効性の維持・向上をはかる。
 

4.「ビジネスと人権」の取り組み

労働組合は企業活動における特別なステークホルダーであり、ビジネスと人権について、積極的に取り組む責任がある。連合の考え方17を活用するなどして、企業規模・業種・海外取引の有無にかかわらず、連合加盟のすべての労働組合がそれぞれの現場で取り組みを進めていく。
 
1)労働組合として対応すべき自社に関する人権課題などを検証・確認しつつ、実情に応じてビジネスと人権に関する取り組み方針を策定する。
2)企業に対し、自社の人権方針、国連指導原則をはじめとする国際規範、取引先の対応などについてのビジネスと人権に関する教育・研修の実施を求める。
3)ビジネスと人権を扱う労使協議機会の確保に努める。具体的には、既存の労使協議の場で扱うことや、必要に応じて委員会や協議機関の設置を求める。
4)企業に対し、人権尊重に関する方針を策定することを働きかける。方針が既にある場合でも、国連指導原則や最新の状況に即した内容であるかを確認し、必要に応じて改定を求める。
5)労使協議などの場を通じ、企業が人権デュー・ディリジェンスの実効ある取り組みを実施するよう働きかける。
6)自社だけでなくサプライチェーン全体の労働者も含めたステークホルダーが利用できる相談窓口の設置など、苦情処理メカニズムの構築を働きかける。
7)企業に対し、一連の人権デュー・ディリジェンスの取り組みの検証と情報公開を求める。
 

5.運動の両輪としての「政策・制度実現の取り組み」

2024春季生活闘争における運動の両輪として、政策・制度実現の取り組みを引き続き推し進める。具体的には、現下の経済・社会情勢を踏まえ、「働くことを軸とする安心社会-まもる・つなぐ・創り出す-」の実現に向けた政策課題について、政府・政党・各議員への働きかけなど、審議会対応、国会対応、春季生活闘争時期における「連合アクション」などを通じた世論喚起など、連合本部・構成組織・地方連合会が一体となって幅広い運動を展開する。
1)現下の経済・社会情勢を踏まえた 2024 年度予算編成実現と 2024 年度税制改正実現の取り組み(「給付付き税額控除」の仕組み構築、揮発油税などの「当分の間税率」の廃止など)
2)価格転嫁や取引の適正化につながる諸施策の実効性を高める取り組み
3)誰もが安心して暮らせるよう、社会保障制度の充実・確保に向けた取り組み(年金、医療・介護、子ども・子育て支援など)
4)すべての労働者の雇用の安定・人への投資拡充に向けた取り組み
5)あらゆるハラスメント対策と差別禁止の取り組み
6)学校職場における長時間労働の是正と教職員の負担軽減の取り組み

 

Ⅳ.闘争の進め方

1.基本的な考え方

(1)「未来づくり春闘」を深化させ、2024 春季生活闘争を経済社会のステージ転換を着実に進めるための闘争を展開するべく、共闘体制を構築する
(2)「底上げ」「底支え」「格差是正」の実現や社会的な賃金相場の形成に向けた情報の共有と社会的な発信に引き続き取り組む。中小企業振興基本条例および公契約条例制定の取り組みとの連動をはかる。
(3)「みんなの春闘」を展開し、すべての働く仲間に春季生活闘争のメカニズムや2024闘争の意義を発信する。働く上で悩みを抱える多様な仲間の声を聞き、社会的な広がりを意識した取り組みを展開する。闘争体制期間中は「連合アクション」の取り組みとして集会やSNSなど情報発信の強化をはかるとともに、労働相談活動との連動、「地域活性化フォーラム」の活用などを工夫する。
(4)「政策・制度実現の取り組み」を運動の両輪と位置づけ、国民全体の雇用・生活条件の課題解決に向け、政策・制度実現の取り組みと連動させた運動を展開する。
(5)労働基本権にこだわる闘争の展開をはかる。
 

2.取り組み体制、日程など
(1)闘争体制と日程

1)中央闘争委員会および戦術委員会の設置
中央闘争委員会および戦術委員会を設置し、闘争の進め方を中心に協議を行う。
2)要求提出
原則として2月末までに要求を行う。
3)ヤマ場への対応
新年度の労働条件は年度内に確立させることを基本とする。そのために、3月のヤマ場を設定し、相場形成と波及をはかる。具体的には、共闘連絡会議全体代表者会議、戦術委員会などで協議する。
 

(2)共闘連絡会議の運営

5つの部門別共闘連絡会議(金属、化学・食品・製造等、流通・サービス・金融、インフラ・公益、交通・運輸)を設置し、会合を適宜開催し、有期・短時間・契約等の雇用形態で働く労働者も含めた賃金引き上げ、働き方の改善、中小組合への支援状況など相互に情報交換と連携をはかる。先行組合の集中回答日における回答引き出し組合数を一段と増やすよう努める。また、相場形成と波及力の強化をはかるべく、個別賃金水準の維持・向上をはかるため、運動指標として「代表銘柄・中堅銘柄」の拡充と開示を行うとともに、「中核組合の賃金カーブ維持分・賃金水準」の開示を行い、賃金水準の相場形成を重視した情報開示を進めていく。
 

3.中小組合支援の取り組み
(1)連合の取り組み

1)労働条件・中小労働委員会で闘争状況を共有するとともに、共闘推進集会などの開催を通じて中小組合の取り組みの実効性を高めていく。
2)働き方も含めた「取引の適正化」の実現に向けて、連合全体で「パートナーシップ構築宣言」のさらなる推進に取り組むとともに、労務費を含む適正な価格転嫁や優越的地位の濫用防止の実効性向上を求める要請等を実施する。
3)中小組合の要求・交渉の支援ツールとして、組合の賃金制度整備や交渉力強化に資する「中小組合元気派宣言」などの資料を提供する。

(2)構成組織の取り組み

1)すべての構成組織は、加盟組合の労働者の賃金が「働きの価値に見合った水準」へ到達できるよう、各組合の主体的な運動を基軸に、責任ある指導・支援を行う。
2)加盟組合に対し、地方連合会が設置する「地場共闘」への積極的な参加と賃金相場の形成に向けた情報開示を促す。あわせて、「地域ミニマム運動」への積極的な参画と、その結果や賃金分析プログラムなどを活用するよう働きかける。
3)賃金制度が整備されていない加盟組合に対し、制度構築の支援を行う。

(3)地方連合会の取り組み

1)「地域ミニマム運動」を積極的に推進し、地域の賃金水準(別紙5「2023 地域ミニマム運動」都道府県別・大括り産業別の賃金特性値)を組織内外・地域全体に開示することにより、地場中小の職種別賃金相場形成の運動を進めていく。
2)相場形成および波及をめざし、「地場共闘」の強化をはかりつつ効果的に情報を発信し、中小のみならず未組織の組合や有期・短時間・契約等で働く労働者の「底支え」「格差是正」へとつながる取り組みを強化する。
 

4.社会対話の推進

(1)連合は、経団連や経済同友会、日商、全国中小企業団体中央会および中小企業家同友会全国協議会など各経済団体や中小企業経営者団体、および人材派遣事業団体などとの意見交換を進め、労働側の考えを主張していく。
(2)地方連合会は、「笑顔と元気のプラットフォーム」の取り組みを通じて、「地域活性化フォーラム」を開催するとともに、中小企業振興基本条例制定に向けた下地づくり等を進め、地方経営者団体との懇談会や行政の取り組みなどにも積極的に参画する。
(3)春季生活闘争を社会的運動として広げていくために、各種集会や記者会見・説明会を機動的に配置するとともに、共闘連絡会議代表者も参画し、共闘効果の最大化をはかる。
 

5.闘争行動

年齢や性別・国籍の違い・障がいの有無・雇用形態などにかかわらず、有期・短時間・派遣などで働く仲間に関わる「職場から始めよう運動」18の展開をはかるとともに、闘争開始宣言中央総決起集会(2024年2月5日)、春季生活闘争・政策制度要求実現中央集会(3月1日)、3.8 国際女性デー中央集会(3月8日)、共闘推進集会(4月5日)の開催や、ヤマ場における談話の発出、「05(れんごう)の日」の取り組みを通じた連合・構成組織・地方連合会が一体となった行動・発信、「連合アクション」など切れ目のない取り組みを展開する。また、常設の「なんでも労働相談ホットライン」の活動を強化し、「全国一斉集中労働相談ホットライン」を 2024年2月6-7日に「STOP雇用不安!みんなの力で職場を改善しませんか」をテーマに実施する。

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